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佐藤由“新怪物"松坂超え154キロ!
2007年08月10日
 第89回全国高校野球選手権大会第2日(9日・甲子園)、大会No.1右腕・仙台育英(宮城)のエース佐藤由規投手(3年)が、甲子園球場の掲示数値としては史上最速の154キロをマークするなど毎回の17奪三振で、強打の智弁和歌山(和歌山)を4-2で下し、鮮やかな完投勝ちで初戦突破を果たした。昨夏、今春と過去2度の甲子園で実力を発揮できぬまま散った右腕が最後の夏に、名実ともに“新怪物”となった。

 甲子園が、地鳴りのようなどよめきに包まれた。同点の八回一死。カウント2-2から4番・坂口に投じた気合満点の直球は、外角低めにズドン。甲子園のスコアボードに、154キロの数字が躍った。

 「前の打席でホームランを打たれたから、今度は負けられない」。三振を奪い勢い余って、マウンド上でクルリと一回転し、打席に立ち尽くす坂口の顔を真っすぐに見据えた。

 「自分自身もしびれました」。ほおが紅潮していた。体がスピンした瞬間に、表示された数字が目に入ったのだ。「あくまでスピードは結果だけど、一生懸命投げた気持ちがそのまま伝わった」。

 154という数字は、甲子園表示としては、寺原(日南学園)と並ぶ高校野球最速タイ。スカウト陣のスピードガンでは六回に155キロを計測したが、“公式記録”では、かつてのどの怪物をも超えた。

 直球だけではない。得意のスライダーに、この日はフォークやチェンジアップも交えて、毎回17個の三振を奪った。六回、一死一塁から坂口に、カーブを左翼席中段まで豪快に運ばれる同点2ランを浴びたが「あそこまで持っていかれて、スカッとした」と逆に開き直った。最後まで持ち味を失わず、九回には三者連続三振。最後の打者は、151キロの直球で見逃し三振に仕留めた。

 甲子園は、昨夏から3季連続で出場、登板した3試合すべてで2ケタ奪三振を演じながら、上位進出できなかった“悲運のエース”が、この日の快投でヒノキ舞台に立った。

 怪物と呼ぶには愛らしすぎる笑顔は、プリンスの雰囲気が漂う。前夜は、昨夏の斎藤佑樹投手も使ったことで有名な高圧酸素カプセルに1時間ほど入り、スタミナを蓄えた。

 これで強豪校が名を連ねた“死のゾーン”の第1関門を突破した。昨年、大阪桐蔭などを倒し、厳しいゾーンを勝ち抜いて頂点に上り詰めた斎藤と、どこか面影がだぶった。


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